2021.11.16

退職金制度について

医院経営コンサルティング③


 私の知る限り、一般企業に比べ医療法人で退職金制度があるクリニックは皆無に等しいと言えます。
 退職金を民間の生命保険や中退共で積立ている医院は目にしたことがありますが、制度が確立しているところはほとんどないといっても過言ではありません。また民間の保険でも20代のスタッフが60歳まで30年以上勤める前提で加入されているナンセンスな退職金積立も目にしたことがあります。
 スタッフのためのイベントや慰安旅行は福利厚生としては一般的ですが、離職率を下げモチベーションを上げるための投資としては昨今効果が薄くなっています。逆に医院のイベントに参加するぐらいであれば、その分給料や賞与を上げて欲しいなどの声もちらほら耳にします。

 現在私たちが医院経営コンサルティングでご依頼いただいたほとんどの医院に退職金制度の導入をご提案させていただく理由は、顧客であるY先生からのご相談からでした。
 そのY先生のクリニックは開業3年目で新患数も順調に伸び続けておりました。11月頃からインフルエンザの予防接種の件数が増えクリニックは慌ただしさを増し、スタッフたちも多忙を極めていました。そんな時あるスタッフから「Y先生これだけ予防接種が増えて忙しいからクリニックは儲かっているでしょう、冬のボーナスは期待していますよー」と言われたそうです。
 ご相談は給料の設定やボーナス額について増やしたほうが良いかどうかというお悩みでした。しかしよくよくお話を聞いてみるとご相談の本質はやっと医院が軌道に乗ってきたところで、スタッフに辞職されたら困るという切実な内容でした。
 過疎化が進む地方でやっと集めたスタッフが辞められるとまた募集するのに経費もかかり、業務を一から教えるのも時間がかかる。一人なら何とかなりそうだが、連鎖的に他のスタッフも後に続かれるともっと困る。そのスタッフの何気ない言葉は本気か冗談交じりに言ったのか真意はわかりませんが、Y先生の胸に深く突き刺さりました。
 私たちはボーナスの増額は一過性のもので、更に一度支給すると次も何かしら理由をつけて増額の要求をされる恐れがある。固定給を上げるのは簡単だが事業が苦しくなった時に下げるのは難しくなる旨をお伝えしました。Y先生のクリニックの給料や待遇はその地方の医療機関の中でも平均以上の支給をしていました。「これだけ給料払っているんだから、逆に感謝されてもいいのにな」ともぼやいてもおられました。

 そこで私たちは企業型確定拠出年金の導入を提案させていただきました。この退職金制度は簡単に言いますとiDeCo(個人型)の企業型で積立額は給料天引きされ、金額は月3,000円から自分で決めることが出来ます(積立額0でもOK)。
 更に医療法人からの積立支給も可能で勤続年数に応じて積立額を設定できます。例えばスタッフ本人は給料が減るのが嫌だから積立をしなくても医療法人から月5,000円の積立が出来ます。もちろん福利厚生費として経費計上できます。

企業型確定拠出年金の図表

 また寿退社されて育児が落ち着いてから職場復帰されても積立は再開できます。他の医院に転職されたとしてもその積立額は転職先の医院に企業型確定拠出年金の制度があればそのまま移行できます。制度がない場合でも個人で積立を継続できます。
 またクリニックに訪問し、スタッフさんに向けて企業型確定拠出年金の説明会を実施させていただきました。ここで重要なポイントは院長の想いを私たちが代弁させていただくことです。院長がスタッフに経営が順調である感謝のカタチとして、一時的な金一封や海外旅行ではなく、『退職金制度』という心意気であること。毎月の法人からの積立は長く貢献すればするほど増えていくということ。その制度は資格や職種、スキルや実力に関係なく平等であるということ。これらをY先生の口から発信すると恩着せがましく聞こえますが、第三者である私たちがお伝えすることで院長の感謝の気持ちは真実味を帯びます。この感謝のカタチをお伝えする演出は非常に重要であると考えます。
 また同時に福利厚生の一環として希望されるスタッフさんには個別にお金の相談窓口をさせていただいております。知り合いにすすめられてノリで契約してしまった生命保険、主人と離婚した時の生活費、他人には内緒にしている投資などなど、お金に関するご相談は多岐に亘ります。

 最近弊社への相談として退職金制度の導入を検討する医院が増えています。私たちの医院経営コンサルティングでは企業型確定拠出年金以外にも民間の法人保険を活用し、オーダーメイドで制度設計をさせていただいています。もし医院の離職率が下がらないと慢性的な悩みを抱えておられるのであれば、一度退職金制度を検討されてみてはいかがでしょうか。最初は退職金よりも今の手取りを上げて欲しいなど、スタッフから反発されるかもしれませんが、将来必ず感謝されるはずです。

 大切なスタッフに長く働いてほしいという気持ちを福利厚生として表現するのは決して簡単なことではありません。スタッフを想う気持ちに寄り添い、オーダーメイドのご提案をさせていただきます。

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